今から備える 不動産の相続対策とは
相続が発生したら、さまざまな手続きが必要になります。特に、不動産を相続するにあたっては、どのように相続したらよいかわからないという方も多いかもしれません。不動産を相続する可能性がある場合には、不動産の相続手続きを理解しておくといいでしょう。
- このブログ記事の趣旨
- 不動産を相続する流れや方法のほか、相続登記にかかる費用、必要書類などを解説します。
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不動産を相続するまでの流れ
最初に、相続が発生してから相続税の申告・納付までの流れを紹介します。
1. 遺言書を確認する
相続が発生したら、初めに遺言書を探します。遺言書があれば、基本的には遺言書に記載されている内容に従って相続が行なわれます。まずは、遺言書があるか調査しましょう。
なお、遺産分割協議後に遺言書が見つかったとしても、遺言書があればその内容が優先されます。
2. 相続人を確定させる
遺言書の有無を確認しながら、できるだけ早期に相続人も確定させます。誰が相続人かを特定するためには、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて調査します。新たな相続人が後から発覚した場合、基本的には遺産分割協議のやり直しが必要になるため、しっかり調査しましょう。
3. 財産を特定して財産目録を作成する
相続人を確定させる作業とともに、被相続人の財産を特定して財産目録を作成します。相続財産に不動産があるかどうかは、市区町村から届く固定資産税の課税明細書を確認しましょう。さらに、課税明細書を発行した市区町村の役所(東京23区は都税事務所)にて「名寄帳」の写しを取得すれば、その市区町村で被相続人が所有する不動産の情報を一覧で確認できます。
課税明細書がなければ、所有する不動産があると思われる市区町村で「名寄帳」を調査することになります。
4. 遺産分割協議を行う
遺言書があれば原則として遺言書の内容に従って相続しますが、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議で分割内容の合意が得られたら、不動産をはじめとする財産を誰がどのように相続するかを記載する遺産分割協議書を作成します。
5. 相続財産の名義変更(不動産の相続登記)
不動産を相続する際には、相続登記をすることで被相続人から相続人に名義が変更されます。相続登記には、登記事項証明書など書類がいくつか必要になりますので、事前に準備しておきましょう。
6. 相続税の申告・納付
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内となっています。期限内に申告・納付できなければ、相続税に関する特例が適用できなかったり、無申告加算税や延滞税がかかりますので、注意しましょう。
相続税の計算式
相続税を計算する流れ
①正味の遺産額の計算方法
正味の遺産額:すべての財産―非課税財産―債務など+一定の贈与財産・・・A
- <正味の遺産額の計算の流れ>
- 不動産・預貯金・現金・株式など相続の対象となる財産をすべて洗い出します。
- 相続税の対象とならないお墓や生命保険金・死亡退職金の一定部分などの非課税財産を除きます。
- 被相続人の借金・未払い金・葬式費用等を差し引きます。
- 相続開始前3年以内の贈与財産(※)および相続時精算課税制度の対象となった贈与財産がある場合、加算します。
※2024年1月1日の贈与から、暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間が相続の開始前3年間から7年間に延長されます。なお、延長された4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算されません。2023年12月31日までに贈与を受けた財産の相続財産に加算する期間は相続開始前3年間であり、相続財産に加算されない総額100万円の適用はありません。
②基礎控除額の計算式
<基礎控除額の計算式>
基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数・・・B
③課税遺産総額(相続税の対象となる財産)を計算
①で求めた正味の遺産額(A)から、②で求めた基礎控除額(B)を差し引き、課税遺産総額を計算します。
課税遺産総額:正味の遺産額(A)-基礎控除額(B)・・・C
なお、課税遺産総額がマイナスまたはゼロの場合、相続税はかかりません。
④課税遺産総額を法定相続割合で割る
③で求めた課税遺産総額(C)を、法定相続分どおりに相続したと仮定し、各相続人の法定相続割合の相続財産を算出します。
⑤法定相続分に応じた相続税額を計算し、相続税の総額を算出
④で算出した相続財産に応じた相続税率をかけて各法定相続人別に相続税額を計算し、それを合計して相続税の総額を算出します。
⑥実際に相続した財産割合で税額を按分する
実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて⑤で算出した相続税の総額を按分し、各人に割り振られた相続税額から、配偶者・未成年者などの税額控除が該当する場合は、それぞれに応じた控除を行ないます。
不動産を相続する方法
不動産を相続する方法は、大きく4つに分けられます。
1. 不動産をそのまま相続する現物分割
現物分割とは、不動産を含む財産をそのままの形で相続する方法です。
例えば、相続する不動産が2つあり、相続人が2人で現物分割する場合、不動産を1つずつ相続するといった形などがこれにあたります。不動産を売却して売却代金を相続する方法などに比べると手続きが簡単ですが、評価額の異なる不動産を現物分割する場合、評価額の低い不動産を相続した人が不満に思うかもしれません。
2.法定相続分より少なく相続する相続人に代償金または他の財産を交付する代償分割
代償分割とは、現物で相続財産を取得した相続人が、他の相続人に対して、代償財産を支払う方法です。例えば、被相続人の子ども2人が相続人で、相続財産が評価額5,000万円の不動産のみであれば、代償分割で均等に分けるとすると1人が不動産を相続し、もう1人に対して2,500万円の代償金の支払い、または他の財産を交付することになります。ただし、当事者間で合意ができれば代償金または他の財産の額は均等である必要はありません。
3.不動産を売却して相続する換価分割
不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割して相続するのが換価分割です。例えば、不動産の売却価格が3,000万円で相続人の子ども3人で均等に分割する場合、1,000万円ずつ相続することになります。
換価分割は、相続人が不動産の相続を望んでいないケースや、相続税の資金が用意できないケースなどで利用されます。
4.複数の相続人で不動産を所有する共有名義
不動産の相続方法として、複数の相続人が共有名義で相続するという方法もあります。共有名義にする場合は、各相続人が所有する割合を持分割合として設定し登記します。
なお、不動産を複数の相続人が共有名義で相続すると、将来的に以下のようなことが生じやすいため、共有名義とする場合は、十分に検討することをおすすめします。
- 「不動産を共有とした場合に発生する可能性がある事象例」
- ・相続人のひとりが単独でその家に住む場合、他の相続人は明け渡し請求できない。
- ・不動産を処分する場合、共有者全員の合意が必要になる。
- ・固定資産税の支払いについて、支払わない者がいると相続人間に連帯納付義務が生じる。
- ・共有者の一人に相続が発生すると、その相続人の配偶者・子どもが相続人となるため共有者が増えトラブルを誘発しやすくなる。
不動産を相続する際の評価方法
不動産を相続する際には、不動産の評価額を確認する必要があります。相続税申告の不動産評価額は、購入時の価格や建築費用ではなく時価で計算します。しかし、相続税などの申告にあたり、土地などについて時価を把握することは容易でないことから、相続税などの申告を容易にして課税の公平を図る観点から、国税局(所)では 毎年、全国の民有地について、土地などの評価額の基準となる路線価および評価倍率を定めて公開しています。不動産評価額の基準となるのは、土地であれば基本的には路線価で、家屋であれば固定資産税評価額です。
また、居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等 )については、令和5年10月6日に「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」が国税庁より発信され、令和6年1月1日以降の相続・遺贈・贈与(以下、相続等)によって取得した居住用区分所有財産(いわゆる分譲マンション)に適用され相続税評価が変更となりました。
続いて評価方法についてご説明いたします。
土地の評価方法
土地の評価額は、基本的には路線価を基準とする路線価方式で評価しますが、路線価がない地域は倍率方式で評価します。
路線価方式
路線価とは、土地が面する道路ごとに設定された土地の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べることができます。この路線価を基準に評価額を算出する方法を路線価方式といいます。路線価は、1平方メートルあたりの価格が千円単位で表記されており、「200A」と記載されていれば、1平方メートルあたりの価格は20万円です。これに、面積や道路からの奥行きによって価格を補正する奥行価格補正率などを掛けることで、その土地の評価額を計算することができます。なお、建物の所有を目的に土地を借りる権利である借地権の評価額は、その土地の評価額に借地権割合を掛けて算出します。借地権割合は、路線価の数字の後ろにあるアルファベットで表されており、借地権割合90%のAから借地権割合30%のGまで、10%刻みで設定されています。
倍率方式
倍率方式は、路線価が設定されていない土地の評価額を算出する方法です。固定資産税評価額を基準に、その土地に設定された倍率を掛けて評価額を算出します。倍率も、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べられます。
家屋の評価方法
家屋は、固定資産税評価額がそのまま相続時の不動産評価額になります。固定資産税評価額は、毎年送られてくる課税明細書に記載されていますが、手元に課税明細書がない場合は市区町村役場の窓口で確認しましょう。
居住用の区分所有財産の評価方法
居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等 )の価額は 、次のとおり算出します 。
居住用の区分所有財産 = 区分所有権の価額(A) + 敷地利用権の価額(B)
区分所有権の価額 = 従来の 区分所有権の価額(*1)× 区分所有補正率(*2)・・・A
※1家屋の固定資産税評価額 × 1.0
※2区分所有補正率:以下の4つの指標からマンションの市場価格と相続税評価額の乖離度合いを基に計算したもの
①築年数 ②総階数 ③所在階 ④敷地持分狭小度(*3)
※3一室の建物床面積に対し、マンション全体の土地のうち区分所有者に帰属する面積の狭さ
敷地利用権の価額 = 従来の敷地利用権の価額(*4) × 区分所有補正率(*2)・・・B
※1区分所有補正率:以下の4つの指標からマンションの市場価格と相続税評価額の乖離度合いを基に計算したもの
①築年数 ②総階数 ③所在階 ④敷地持分狭小度(*3)
※2一室の建物床面積に対し、マンション全体の土地のうち区分所有者に帰属する面積の狭さ
※3路線価(画地補正後)×敷地全体の面積×敷地共有の持分(敷地権割合)
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相続登記にかかる費用
不動産を相続する際には、相続税以外にも相続登記に関する費用がかかります。具体的にどのような費用がかかるのかをご説明いたします。
登録免許税
相続登記には、登録免許税を支払う必要があります。相続登記での登録免許税額は、固定資産税評価額の下3桁を切り捨て、それに税率の0.4%を掛けて算出した金額です。算出した金額の下2桁は切り捨てます。
登記事項証明書などに関する費用
相続登記には、登記事項証明書や戸籍謄本、住民票などの書類を取得する費用や、書類を法務局へ送付するための郵送費なども必要です。
登記事項証明書を法務局の窓口にて書面で交付請求する際の手数料は、不動産1件につき600円かかります。
まとめ
遺産整理のご相談を承っております。被相続人さまの財産内容や相続人の状況、遺言の有無などを伺った後、彦や不動産が提携している司法書士、税理士をご紹介し財産目録の作成や遺産分割協議書作成と、それに沿った相続手続きも承ります。
不動産の取引には非常に複雑な知識や経験が必要になります。いい不動産会社と出会うことができれば、面倒な手続きも代行してくれて適切なアドバイスをしてくれます。
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