知って損しない親族間売買とは
親子や夫婦といった親族間で不動産を売買することを「親族間売買」といいます。親族間売買は、第三者への売却や無償で取引する贈与にはないメリットがある一方、親族間売買ならではの注意点も少なくありません。
- このブログ記事の趣旨
- 親族間売買を行う際は、ありがちなトラブルはもちろん、より良い取引になるポイントなども把握しておく必要があります。このブログ記事では親族間売買の流れなどの基礎知識、代表的なメリットと注意点について解説します。
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親族間売買とは
親族間売買とは、個人間売買の一種で、親族の間で不動産を売買することです。
「親族」の範囲は?
「親族間売買」における「親族」は、民法で定義される戸籍上の親族と税務署の捉える親族の範囲にはやや違いがあるといわれますが、税務署は明確な範囲を定めてはいません。民法上の親族の範囲は、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族となります。一方、税務署は不動産の親族間売買で確認したいことは、「みなし贈与」が発生しているかいないかです。そのため、親族間売買に関しては、相続人に該当する親族がその範囲と考えらえます。
また、不動産の売買に適用される税務上の特例を受けたい場合は、特例の定める親族であるか否かに注意が必要になります。また、親族間での売買といえども、将来トラブルが発生しないように契約書は必ず作りましょう。
不動産を売却して手元にいくら残るか知りたい方は、不動産会社で査定を受けましょう。不動産の売却にかかる税金・費用などは、売却額によって変わります。正しい手取り額を知るためには、正確な査定額を把握する必要があります。
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一般的な不動産売買との違い
実は特定の条件に該当しない限り、親族間売買と一般的な不動産売却で流れや支払う税金の種類などに大きな違いはありません。それでは、親族間売買と一般的な不動産売買の違いがあり、どんな点に注意しなければならないのでしょうか?親族間売買では、一般の不動産売買と比べて以下の項目に注意が必要です。
- 家族間売買で注意しておきたいのは、主に次の3点
- ①売却価格
- ②税務上の受けられる控除や特例
- ③住宅ローン審査
以下に詳しくご説明いたします。
売却価格
もちろん、他人同士の売買でも破格の安い価格での取引も可能です。ただ、他人であれば、売主は高く売りたい一方、買主は安く買いたいのが心情で、利益相反する関係にあります。したがって、極端に安い価格での取引は考えにくいものです。
だからと言って、他人同士であっても著しく安い価格での取引となれば、「みなし贈与」と判断されることがありますので、注意は必要です。
「みなし贈与」で気を付けなければならないのが、「著しく低い金額」での取引ですが、この「著しく低い金額」の明確な規定はありません。
ただ、過去の判例をもとに、「著しく低い金額」の目安とされているのが、時価の80%です。
個々の状況にもよりますが、この目安を下回る金額での取引は「みなし贈与」として看做される可能性が高く、看做されれば贈与税の課税対象になります。
親族だからとの安易に安く売却してしまうと、売却時の税金に加え、贈与税も課税されてしまうので注意しましょう。
受けられる税務上の控除や特例
親族間売買で注意しなければならないものとして、不動産売買時に適用できる税務上の控除や特例が使えない場合がある点です。
以下のような控除や特例が該当します。
- 売主が対象の特例
- ・居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除
- ・居住用財産を売ったときの軽減税率の特例(10年超所有軽減税率の特例)
- ・特定の居住用財産の買換えの特例(買い換え特例)
- ・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 買主が対象の特例
- ・住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- ・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例
住宅ローン審査の厳しさについての違い
その最大の理由は、貸した住宅ローンが住宅の購入以外の目的(事業資金など)に使われる可能性があるからです。
金融機関は、親族間売買を利用して、融資した金利の安い住宅ローンを他の目的に使われることを恐れています。親子や兄弟など身近な親族であれば、口裏を合わせるなどして資金を流用することが簡単にできてしまいます。
そのため、一般的な不動産売買に比べて住宅ローンの極端に審査が厳しくなります。
大手金融機関や住宅ローンに力を入れている金融機関ではそもそも親族間売買は取り扱っていないところが多くなっています。
親族間売買のメリット・デメリット
この章では親族間売買のメリット・デメリットについて考えていきます。
親族間売買のメリット
- ①安心して売買できる
- ②支払いや引渡しなどの条件を柔軟にできる
- ③相続対策としても活用できる
①安心して売買できる
特に長い間住んできた家には愛着があるものです。所有者である親が高齢になり、家の手入れが大変、介護施設などへ入所するといった理由で、家の売却を考えるものの、愛着もありすんなりと売却を決断できないこともよくあります。
そうしたとき、子供や兄弟など親族への売却であれば、愛着のある家が他人のものとなるのではないため、売却する意思も固めやすいものです。
一方、譲り受ける親族も購入する家のことをよく知っているため、購入しやすいと言えます。
②支払いや引渡しなどの条件を柔軟にできる
通常の不動産売買では、契約時に手付金を支払い、決済時に不動産の残代金を一括して支払うのが一般的です。
しかし、親族間売買の場合、売る側の住宅ローンの支払いが終わっているか、手持ち資金で完済できる状況であれば、売主と買主が相談して、買主の代金の支払いを分割払いとすることが可能です。
ただし、この場合は分割払いする元金に対して利息を取らないと利息分が「みなし贈与」と看做されます。そのため支払いを分割払いとする場合は、必ず分割払いの契約書を取り交わし、利息も決めて支払うようにしましょう。
また、親族間での取引となるため、名義の移転は契約に従って所定の日に行うとしても、鍵の引き渡しや引越しなどは先にすることも、ゆっくりとすることもできます。
③相続対策としても活用できる
親が亡くなってから親の資産を相続することはできますが、この場合、遺言があっても相続をめぐって親族間でトラブルが起こる場合があります。
現金などの金融資産と違って、特に不動産は単純な分割が難しいため揉め事が起こりやすいものです。
不動産を相続する場合は、不動産を売却して現金化し、それを分割するか、不動産の名義を相続人で共有するのが一般的です。
ところが、そもそも売却することを巡って揉めてしまったり、金銭の分配や共有持分を巡ってもトラブルとなることがあります。
親族間売買では、親の存命中に行え、しかも適正な価格で買い取るというのであれば、他の相続人も納得できる可能性が高くなります。
また、後日、揉めないように親族間で不動産売買を行う前に、相続人の間で話し合うことも必要になりますから、トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
親族間売買のデメリット
一方、親族間売買のデメリットは4つあります。
- ①「みなし贈与」を疑われやすい
- ②税務上の特例が適用されない可能性がある
- ③住宅ローンが利用しにくい
- ④個人間売買としてしまうとトラブルが起きやすい
以下で詳しく見ていきましょう。
①「みなし贈与」と疑われやすい
親族だからと安い金額で不動産を売買しても問題ないのではないかと考えている人も少なくないかもしれません。
しかし、親族間売買は、相続対策として悪用されることを懸念して、税務署から「みなし贈与」を疑われやすいもの。特に売買金額について細心の注意が必要になります。もし、あまりにも安い金額で売買してしまい、「みなし贈与」と判断されると、高額な税金(贈与税)を支払わなければならなくなります。
例えば、父と息子の間で時価3500万円の自宅を2000万円で売買したとします。
時価との取引価格の差は1500万円です。前述しましたが、2000万円という金額は時価の約57%で、「著しく低い価格」の一つの目安である時価の80%を下回っています。このケースでは、「みなし贈与」と看做される可能性が高く、看做された場合は、時価との差額である1500万円に贈与税がかかります。
上記の場合の贈与税を計算してみましょう。直系尊属である父からその年の1月1日において20歳以上の子に贈与する場合は「特例贈与財産用」の計算となり、以下のようになります。
- 贈与税額の計算(特例贈与財産用)
- =1500万円 – 110万円(基礎控除)
=1390万円 × 40%
=55万円ー190万円(控除額) - =366万円
さらに、贈与税は基本的には一括で納めなければならないため、贈与税が課税された場合、このケースでは息子は366万円を一度に納税する必要があります。
②税務上の各種特別控除が適用されない可能性がある
不動産の売買では、さまざまな税務上の恩恵があり、特例や控除を受けることができます。
しかし、親族間売買では、特別控除の適用対象外となるケースがあるため注意しなければなりません。
親族間売買でも、例えば親名義の家をその子である娘の配偶者である夫が購入するなどの場合には、売主である親は「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」の適用対象になります。
税務上の特別控除を利用したい場合は、不動産会社の担当者や税理士、税務署などに相談してみましょう。
③住宅ローンが利用しにくい
住宅ローンを利用して借りた融資を事業資金など別の用途で使用する恐れがあることや個人間売買により重要事項説明書がなかったり、売買契約書など提出書類に不備があるなど、さまざまな問題が発生する可能性が高いことから親族間売買では融資の審査が厳しくなります。
そのため、住宅ローンの申し込みをしても審査で落ちるケースも多く、そもそも親族間売買では融資を受け付けていない金融機関も多くなっています。親族間売買では、融資が利用できない場合も想定して売買を考える必要があります。
上記で紹介したデメリットをはじめとして、一般的な不動産売買に比べて親族間売買は注意すべき点が多くなっています。
親族間売買は、個人間でも可能ですが、一度不動産売買や税金に詳しい不動産のプロの話を聞いてみてはいかがでしょうか。
不動産の親族間売買の流れ
不動産の親族間売買をスムーズに行うには、取引の流れを把握しておくことも大切です。
親族間で不動産売買をする際の大まかな流れは、次の通りです。
- ①不動産の現状を確認する
- ②売買条件を決める
- ③売買契約を結び、決済・引渡しする
不動産売買ではさまざまな準備と手続きが必要で、慣れない人が行うと数ヶ月程度の時間がかかることもあります。
そのため、スムーズに取引を完了させるには、事前の準備を念入りに行うことが大切です。
売買の準備は早めに進めておきましょう。
①不動産の現状を確認する
まずは売買する不動産が、どのような状態にあるのかを確認します。
一般的な不動産売買と比べて、親族間で売買する場合には、不動産のこと売主・買主双方がよく知っている不動産であることを前提します。
その場合チェックすべきポイントは大きく分けて2つです。
ただし、親族間であっても売主買主ともに不動産のことがよくわからない場合は、プロである不動産会社に依頼した方がいいでしょう。
プロに依頼することで、費用はかかりますが、細かく、正確に不動産のことを調べてもらうことができ、売買そのものに問題が起こりにくいので、後のトラブルが発生しにくくなります。
- 登記事項証明書の内容
- ①現在の所有者は誰か
- 以前の相続時に名義変更していないなど、現在の所有者が現状と一致していない場合は先に名義変更が必要になります。
- ②抵当権は設定されていないか
- ローンの返済が残っていて抵当権が設定されている場合は、売買前に完済して抵当権抹消するための手続きが必要です。完済後、抵当権の記載だけが残っている場合でも従前の金融機関など抵当権者から抹消の書類をもらって抵当権を抹消する手続きが必要です。
- ③差し押さえなど所有権を阻害することはないか
- 差し押さえなどがあると問題です。差し押さえなどの記載があった場合は、その原因を解決してから売買した方がいいでしょう。
- 価格の相場
- ①所有している不動産の相場価格を調べる。
- 時価に対して「著しく低い価格」だと「みなし贈与」として看做され、買主に贈与税がかかる。
登記事項証明書とは、法務局にある登記簿に登録されている土地や建物の情報を証明する証明書のことです。いわゆる「登記簿謄本」のことです。
登記事項証明書は法務局に行くかホームページで取得し、不動産の権利について確認しましょう。
また、いくらで不動産を売買するのか、金額を決めるためにも事前に相場を調べておく必要があります。相場価格と比較して、適切な金額で売買を行いましょう。 繰り返しになりますが、相場よりも著しく低い金額で取引されると贈与税がかかります。
贈与税は税金が高額になる傾向がありますので、売買後に税金が支払えなくなった、ということがないよう注意しましょう。
②売買条件を決める
不動産の売買では、取引にあたって不動産の売買金額を決めるだけではなく、ほかにもさまざまな売買の条件を設定する必要があります。
例えば、引き渡した不動産に不備があった場合には、通常の取引では一定期間内の不備であれば売主の責任となりますが、特に親族間売買では誰がどのように責任を取るのかを定めた方がいいでしょう。
その他、親族間であっても、引き渡しの時期や税金など清算する金銭、契約解除となる事項などを決める必要があります。
また、特に、ローンを利用できる場合には、決済・引渡しの日を定めておく必要があります。
最新の法令に則って作成された不動産売買契約のひな型となるものが市販されています。
個人間で売買する場合には、そうした書面を活用するといいでしょう。
当たり前のことですが、契約書に記載する内容は、買主と売主で話し合って双方合意できる条件としておきましょう。
引き渡し時に不動産の名義変更(所有権移転登記)のために必要な書類も揃えるようにしましょう。
③売買契約を結び、決済・引渡しする
必要な書類も揃え、双方が売買条件に合意できたら、売買契約を結びます。契約書には必要事項をすべて記載しておき、調印を行うことで契約は完了です。
また、ローンを利用しない親族間売買では、契約と同時に決済・引き渡しを行うことが多いようです。
決済とは、売買代金や清算金など金銭授受を行うこと、引渡しは鍵の引渡しという物理的な意味もありますが、所有権を移転し、名義を変更する意味でもあります。
決済後は、必要書類を揃えて、名義変更(所有権移転登記)を同日に行います。
登記自体は後日でも大丈夫ですが、ローンを利用する場合は必ず同日に行わなければなりません。
なお、登記の申請も専門的なことが多く、手続きに必要な書類の準備や申請手続きそのものも大変な場合があります。
登記申請については専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。
なお、ローンが利用できる場合には、契約後に必要な書類を提出して、金融機関の審査を受けることになりますので、契約と決済・引渡しは別の日程になります。
決済し、金銭授受が行われたら、忘れずに領収書などを作成し、後日税務署からのお尋ねなどがあったときにきちんと証拠となる書面を残しておきましょう。
できれば、代金などは銀行振り込みで支払い、客観的に資金の移動があったことを示せるようにしておいた方がいいでしょう。
親族間売買を上手に行うには
不動産を親族間で売買を上手に行うには、意識しておくポイントがいくつかあります。
トラブルや失敗なく親族間での不動産売買を成功させるには、次のポイントを意識しておきましょう。
- ①売買契約書を必ず作成する
- ②他の相続人と相談する
- ③専門家に依頼する
- ④ローンが利用できない場合は分割払いを検討する
これらを注意ことで、トラブルや失敗を回避して、スムーズに親族間売買を成功させやすくなります。
①売買契約書を必ず作成する
不動産売買などの取引を口約束だけで取引するのはあらゆるトラブルの元です。
また、「みなし贈与」だけでなく、さまざまな税務上の対策としてもあらゆるものを書面化して保存しておく必要があります。
不動産の売買に限らず、大きな金銭の動くものは必ず契約書を作成しておかなければいけません。
不動産の売買契約書については、記載しておかなければならない事項がたくさんあります。
はじめから作成することは難しいので、専門である不動産会社に作成を依頼するか、最新の法令に則った市販の契約書を使用するようにしましょう。
②他の相続人と相談する
ほかの親族ともめないためにも、事前にほかの相続人にも話をしておき、不動産売買を行う旨を伝えておきましょう。相続人に黙って不動産売買をすると、後からトラブルになることも少なくありません。
取引を行う当事者だけではなく、相続人の全員と話し合いましょう。相続権を持つ人が全会一致の意見を持って取引を行うなら、トラブルは回避しやすくなります。
③専門家に依頼する
不動産売買にはさまざまな準備と手続きがあり、専門知識が必要となる部分も多くなります。
そのため、売買の取引において難しい手続きの部分は、無理せず専門家に依頼して、手続きを代行してもらいましょう。
例えば、売買の準備や手続きの手配については不動産会社に、登記の手続きは司法書士に依頼することがおすすめします。
すべて個人で行うことも可能ですが、失敗しやすく、手間もかかってしまうため、必要に応じて専門家を頼ることが大切です。
④ローンが利用できない場合は分割払いを検討する
住宅ローンを利用しにくい親族間売買では、無理にローンの利用を考えずに、買主の売主への代金の支払いを分割払いにするという方法もあります。
契約書に支払い方法を記載することで、一括ではなく分割で代金を支払うことも可能です。
ただし、贈与税が課税される可能性があるので、分割払いとする場合には、利息も支払うものとするようにしてください。
ローンの利用を前提とするよりも売買の成立を重視するなら、最初から分割払いを検討するといいかもしれません。
まとめ
親族間に限らず、不動産売買は完全に個人の力だけで行うことは難しいです。そのため、必要に応じて専門家に相談したり、手続きを代行してもらったりするほうが、スムーズに取引を終えられます。
個人間で取引をすると、契約の取り決めから引き渡し後まで、さまざまなシーンでトラブルが起きる可能性があります。トラブルなく売買を成功させるためにも、難しい部分は専門家に依頼して、取引を上手に行いましょう。
不動産の取引には非常に複雑な知識や経験が必要になります。いい不動産会社と出会うことができれば、面倒な手続きも代行してくれて適切なアドバイスをしてくれます。
また、思い入れのある土地や、資産性のある土地なら手放さずに活用するという選択肢もあります。
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